1778年、ひとりの革命的なヒーラーが探究の道をさらに一歩前進させました。患者がキリストやヒーラーの力を信頼していなくても著しい治療効果が得られると主張する人物があらわれたのです。それは、ドイツの医師フランツ・アントン・メスメル(独:Franz Anton Mesmer,仏:Frederic-Antoine Mesmer, 1734-1815)です。

フランツ・アントン・メスメル
(独:Franz Anton Mesmer,仏:Frederic-Antoine Mesmer)
フランツ・アントン・メスメル














メスメルは、患者が治癒したのは宇宙に遍満する流体(fluide)というエネルギーを利用したからであると主張しました。メスメルはこの流体が宇宙に遍満する微細な液状物質で、人間とほかの生命体、生物どうし、地球や天体と結びつける媒体であると主張しました。(この説はパラケルススの医学体系における宇宙観と同じです)。メスメルは、自然界のすべての存在は特定の力を持っており、その特殊な力のはたらきによって他の存在の上にそれ自身の存在を顕現させられると述べています。彼は、あらゆる物体・動物・植物、そして鉱物の中にまでその不思議な媒質が浸透していると考えていました。

メスメルは、ウィーンにおける医学研究時代のはじめの頃、患者の病変部位の上に磁石をかざすと病気が治る場合が少なからずあることに気づきました。また神経疾患をもつ患者においては、磁石の刺激が異常な運動を引き起こす傾向がみとめられました。メスメルは、磁気治療が成功しているときには筋肉の大きな痙攣(けいれん)や反射が頻繁に発生すると記録しています。やがてメスメルは、治療がうまくいくのは、磁石を伝導体として彼自身の体内から生じたエーテルの流れが患者の体内に注入され、微細エネルギー的な治療効果が生まれたためであると信じるようになりました。そして、その「生命力の流れ」が磁気的な性質を帯びているものと考え、それを、(無機物や鉄にはたらく磁気と区別するために)「動物磁気」(magnetisme animal,Animal magnetism)と名付けました。

動物磁気をもちいた治療によって不随意的な痙攣(けいれん)や振顫(しんせん)がおこることから、メスメルは研究を通じて、微細エネルギーの流れが神経系と関連しているのではないかと考えるようになりました。彼は神経と生命力の流れが全身に流体を輸送し、流体が供給された部位が活力を取り戻すという仮説を立てました。メスメルの「流体」という概念は、古代中国の「気」とも通じているように見えます。気エネルギーも、経絡系を流れて神経と身体組織に生命力を供給するものです。

健康とホメオスタシスの基礎には、生命を維持し、制御している磁気的な流体のはたらきが欠かせないと、メスメルは確信しました。この生体磁気との適切な相互作用をもち、基本的な自然法則と調和しているときに、人は健康でいられます。病気は、肉体とそうした自然の微細な力とのあいだの調和が乱れたときに発生するのです。メスメルはさらに、その普遍的な力を生み出す最良の供給源は人体そのものであると確信するようになりました。そして、そのエネルギーの流れの最も強い放出点は手のひらであると考えました。治療家が手を患者の体に触れて治療(「磁気的パス」)をおこなえば、患者に向かってエネルギーが直接流入するというわけです。フランス革命をむかえていたこの時期において、この療法は、彼自身の影響力によって国民のあいだで大流行することになりました。

しかし不幸なことに、当時の科学者の多くは、メスメルの方法をたんなる催眠術または暗示効果であると考えていました。一部の科学者はいまだに催眠を「メスメリズム」(mesmerism)と呼ぶことがあり、「メスメライズ」という言葉は現在でも「催眠状態にする」という意味に使われています。

1784年、フランス国王はメスメルの治療実験の真偽を調査委員会に諮問しました。その委員会のメンバーには、科学アカデミー会員、著名な医学者、そしてアメリカの政治家であり科学者でもあったベンジャミン・フランクリンなどが参加していました。彼らが計画した実験は、「治療に成功した症例の背後には磁気的な流体という力が存在する」というメスメルの主張の真偽をたしかめるためのものでしたが、残念ながら、委員会によって計画された検査のいずれもが、流体の医学的な効能の測定とは無関係なものでした。この権威ある委員会が最終的にくだした結論は「流体は存在しない」というものでした。患者に対する治療効果そのものは否定しませんでしたが、その効果は感覚的興奮、想像力、(ほかの患者の)模倣によるものだと考えたのです。興味深いことに、医学アカデミーは1831年に動物磁気の再検討をおこない、メスメルの視点を一部ではあるが公的に認めました。しかし、そのような評価にもかかわらず、その後メスメルの研究が広く世間に認められることはありませんでした。

手かざし療法の生理学的作用に関する最近の研究によって、治療作用をもつ微細エネルギーが磁気的性質を帯びていることが確かめられてから、研究者たちはメスメルが人体の微細エネルギーの磁気的性質を何世紀にもさきがけて理解していたことを立証していきました。しかし後述するように、そうした微細エネルギーを従来の電磁気的測定機器によって直接測定する試みが困難であることは、現代でもメスメルの時代とさほど変わりはありません。

メスメルはこの微細な磁気的な力が水に蓄えられることにも気づいていました。水に蓄えられた治癒エネルギーを患者に中継するために「桶(baquet, バケ)」と呼ばれるエネルギー貯蔵庫を考案され、すでに使用されていました。ともあれ、こんにちではメスメルを偉大な催眠術師だと考える人は多くても、微細な磁気的治癒エネルギーについての彼のパイオニア的な研究を知る人はほとんどいません。
(「バイブレーショナル・メディスン」 p.354-357)

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記事更新日:2020/06/16